「白山に登る」 (2702m) 平成15年7月30日、31日




平成15年7月30日 水曜日 朝雨、曇り後晴れ

去年、薬師岳に共に登山した同僚の田原さんと、一泊二日の予定で三大霊山の一つである加賀の「白山」に、大白川平瀬登山口から登りました。
朝6時に高岡を出発。生憎雨模様。しかし天候は回復に向かっているとの天気予報。砺波インターから高速道路を使用して、城端縄ガ池パーキングで朝食をとった時は、かなりの雨が降っており、雨音も強い状態。 高速料金1350円を払って白水湖畔小屋(7月17日にオープン、宿泊も可能)に8時45分に到着した頃は小雨模様。空模様を気にしながらマスターの所さんとしばらくの間話し込む。近くには、流れ落ちる水が乳白色になるところから名が付いた白水の滝「幅8m、落差72m」があるそうだ。 帰りの温泉を楽しみに、別れを告げ9時30分ザックを背負い出発。
自動車駐車場付近(1260m)から登山開始。 大蔵山避難小屋までは5km、そこから室堂平まで1.9km。4時間30分から5時間で室堂センターに着くとのこと。今日は宿泊するだけだから休憩を入れながらゆっくりと6時間ほどの登山を楽しめば良い。
小雨に濡れたブナ原生林の中を50歳過ぎの夫婦と共に登り始める。歩幅の会わない階段と、木の根のざれ道が続く。私も、去年に比べるとかなり山歩きにも慣れて来たらしい。周りの風景を聞きながらも、足取りはしっかりしている。山道の傍らには掌大の蛙が私たちの足音にも動ぜずに、ジッと身じろぎもせずに鎮座しているとのこと。
毎年一度は共に山に登山するという夫婦に声をかけて、先に行く事にした。登山後、2kmから3kmのところに崖崩れの箇所が3箇所あり、一箇所にはロープが設置されていた。周りの状態を把握出来ない私は、ひたすら田原さんの一言を頼りに一歩一歩を確かめ歩を進める。眼下にはエメラルドグリーンの白水湖が、雲の間から差し出した太陽の光に照らされているらしい。雨も上がり陽射しがまぶしく眼に飛び込む。
高度が増すにつれて、樹木も雪のためにねじれたようなダケカンバ(岳樺:白樺より高所に生え、樹皮はやや赤みを帯びる)の大木に替わってきたとのこと。
4kmを過ぎたところで、右手前方に御前峰(2702m)、剣ヶ峰(2677m)が私たちを招くように顔を見せてくれている。途中大倉山山頂(2039m)との分岐点があったが、大倉山非難小屋へと足を運ぶ。
12時40分到着。トイレ、水はないがかなりなかは広い。15人は宿泊できるのではないだろうか。早速、ザックを下ろして昼食にする。田原さんは湯を沸かし、熱いお茶とラーメンを作っている。汗をかいた後の熱いお茶も美味い。
白山からの下山の人は、全く展望は見ることが出来なかったと、外の太陽を見ながら恨めしそうに語っている。しばらくして先ほどの夫婦も到着。初対面の人々とも気軽に話せる。これも山行の楽しみの一つだ。私たちは皆さんを見送りゆっくりと休憩を取り13時45分室堂センターに向かって出発。
長い階段状の道が長々と続く。カンクラ雪渓を眺め小休止して歩みを進める。左手に別山、右手に白山。辺りにの樹木は低く展望は良い。かすかに硫黄の匂いがする。 山道の傍らの花に勇気付けられ、ひたすら階段を数え重い足を運ぶ。今日の宿泊の赤い小屋が見えてきた。室堂センター(2400m)に15時40分到着。
一泊3食付きで8700円を支払い、早速ビールで乾杯。いつもながら、山頂の遠い飲み屋は歌も料理もないが、最高のビールの味だ。天候も回復し夕陽も期待できそうだ。17時からの夕食を済ませ、日の入り(19時2分)を待って外へ出る。
雲海を染めながら太陽が沈んでいく。雲海の色は確認できないが、素晴らしい日の入りである。刻々と変化する雲海の色を田原さんに説明してもらいながら、しばし雄大な雲海に沈み行く夕陽を眺めた。雲海の色はオレンジから黄色。そしてだんだんと紫色と変化し、ついには夜の暗さに溶け込んで消えてしまったらしい。山小屋の従業員の人も、雲海に沈む夕陽は久しぶりだとのこと。光の関係であろうか、時々確認できる空の色、微妙に変化する雲海の色を心に描いて、充分に日の入りを楽しんだ。満足である。
明日は、山頂からの日の出が楽しみだ。

平成15年8月31日 木曜日 晴れ

日の出(5時2分)の1時間前に打ち鳴らされる大きな太鼓の音に合わせて身支度をして、4時10分山頂に向かう。ヘッドライトをつけた田原さんの後ろを、誘導ロープを頼りにジグザグの山道を登る。日の出を拝む登山者がつけている光が、暗闇の中を延々と続き不思議な登山光景を描き出している。4時40分、主峰御前峰の頂上に立つ。だんだんと空が白み始め、赤紫の雲海を染めながら太陽が昇り始めた。素晴らしい日の出だ。誰となく「日本万歳、万歳」の完成が上がり私も万歳を叫んでいた。皆さんの明るい声を聞くことは本当に嬉しい。無意識に地球と人類の平和を願い、掌合わせている私であった。
太陽が空を明るくするにつれ、雲海の上に御嶽山、乗鞍岳、穂高連峰、槍ヶ岳、剱岳、八ヶ岳、そして南に荒島岳、冠山、能郷白山が一望出来るらしい。私は指で方向を確かめそれぞれの山を想像した。特に、一度は登りたい憧れの山、槍ヶ岳、剣岳を強く心に焼き付けた。
何度も白山に登山している人も、こんなに素晴らしい日の出は初めてのこと。ひょっとしたら富士山も見えるのでは、としばしの間富士山の方向を注視した。確かに方向的には間違いないが富士山の形の影が見えたらしい。雲の影か実際の富士山であるかは確認する手段はなかったが。 心ゆくまで日の出を堪能した後、段差のある道を下りお池コースを巡った。
7つの湖があるらしいが雪で覆われていて、心に残ったのはきれいな緑色の火口湖翠ヶ池、紺屋ヶ池、千蛇ヶ池の池であった。
7時に室堂センターに着き朝食。今日はとんび岩を通って、南龍荘に出て、展望歩道を歩き、室堂分岐点から大白川へと下山の予定である。 しかし今年は雪が多く、とんび岩から南龍荘に抜けるコースは雪で覆われ下りは危険そのもの。「注意を聞かずにこのコースで下山した人は、目を血走らせて南龍荘に駆け込んでいる。ミンチになりたいなら行きなさい」との従業員の言葉。さすがに滑落して岩に砕かれてミンチになる勇気は持っていないので、花の多いエコーラインに変更して、8時15分室堂センターを後にする。
室堂周辺からミヤマクロユリ、ハクサンコザクラの群落が多い南龍荘までは、下り一変等の道である。ニッコウキスゲが八部咲きで、黄色の花びらを揺らしている。
別当出合に下りる20人ほどの小グループと、追い越し、追い越されしながら、道端の花を愛でながら下る木道に入ると、ウラジロナナカマドが多く、シナノキンバイ、イワイチョウ、コイワカガミ、ミヤマクロユリ、・・・・が見られるが、私にとっては識別が難しい。
朝から歩き続けているので、かなりオーバーワーク気味である。
別当の分岐点で小グループと別れ、10時10分南龍荘に到着。
熱いコーヒーを飲み、10時40分展望歩道に向かって出発。 今度は上り一変等の登山道になる。
途中、調査員の人たちとすれ違う他は、登山者はいない。所々に高山植物の群生が見られる。田原さんはカメラを取り出しシャッターを切っている。クルマユリやイワギキョウが多いらしい。特にクルマユリの派手な朱色は、目に鮮やかに映じてカメラにおさめずにはおれない様である。
かなりの体力を消耗して12時30分室堂分岐点(室堂まで0.5km)に出る。 大白川登山口までは、後6.4kmもある。体力的にも少し不安。 とりあえず広い場所まで下って昼食にする(12時50分昼食、13時10分出発)。
14時、大蔵山避難所に到着。かなりの疲労ではあるが、精神の緊張と高揚で、まだ足取りはしっかりしている。山道が崩れている箇所を下る。右側はかなり落ち込んでいるらしい。登りの時はさほどの恐怖感はなかったが、下りはやはり足がすくむ。誘導ロープを放し、下からの指示に一足一足を確かめて下る。蟹の横這いになり少しづつ足を運ぶ。次に、設置してあるロープを掴み、田原さんの誘導の声に足の位置を確かめ下りる。三箇所の道の崩れを無事通過したときは全身(汗、汗・・冷や汗)。心を再度引き締めて下る。
16時20分、無事白水湖畔小屋に到着。
氷の入った水が美味い。早速200円を払って露天風呂に入る。硫黄温泉で石鹸の使用は不可。ゆったりと広い湯船に身体を浮かべ、くつろぐ。このまま眠りに引き込まれていくようななんとも言えない良い気分である。
本当に今日はよく歩いた。12時間近くは歩いているであろう。小屋のマスターの所さんも私たちのコースを聞いて驚きの表情であった。
17時30分、所さんに別れを告げ高岡へと向かう。城端縄ヶ池パーキングで小休止して19時高岡着(大白川から高岡までの高速料金1650円)。
雲海を染めて沈む夕陽、雲海から顔を出す日の出に会った忘れられぬ登山であった。


クルマユリ

ミヤマトウキ

夕陽


以下の写真は、m氏が平成16年8月10日に、同じ大白川の登山口から登山した際のものです。著作権は、m氏にあります。

オニアザミ

オオバギボウシ

イブキトラノオ

ニッコウキスゲ

ハクサンフウロ

ホタルブクロ

タカネナデシコ

マツムシソウ

イワギキョウ

ミヤマリンドウ

コマクサ

チングルマ

ヤマクワガタ

ウラジロキンバイ

アオノツガザクラ

ミヤマコウゾリナ

ヨツバシオガマ

ダイモンジソウ

カワラハハコ

モミジカラマツ

セリ

シシウド

サラシナショウマ

キツリフネ
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