スキーに挑戦「ブラインドスキーの体験」  Saturday,2/22/03


小学校時代に近くの川の土手や運動場にスロープを作り竹スキーをしてからもう40年も経っている。本格的なスキーをしたことは全くない。そんな私がスキーを体験することになった。
去年は「三ツ星山の会」の人たちと登山をして、すっかり山の魅力の虜になり素晴らしい体験をさせてもらった。今年も一月11日には「來拝山」899mにワカンジキを履いて登り、26日には「立山の麓の「吉峰公園」をスノーシューを履いてハイキングを楽しんだ。一面の銀世界に身を包まれて心身共に清浄化されていく新鮮な感覚を味わった。
その時、ブラインドスキーのはなしが出た。晴眼者の時はスキーには興味は殆どなかった私であるが、登山と同様に不思議に心が動き、「雷鳥バレー」でブラインドスキーをすることになった。
2月22日、生憎小雨もようではあったが8時に富山駅の正面で袋谷さんと待ち合わせた。
私達視覚障害者にとっては列車の利用はかなりの危険性を含んでいる。多くの人がホームからの転落を経験している。私はその危険性を避けるために移動はバスを利用するのが常である。しかし、登山をするようになってからは朝が早い。列車の利用が多くなった。
自動販売機で切符を買う煩雑さ。先ず、販売機の位置・行く先までの運賃の料金を確かめなければならない。
そして改札口の場所・ホームまでの階段の昇降。列車の昇降口を確認してホームと列車の空間に注意
をしながら、乗下車する。。
駅の出口も一つではない。何度も利用している駅ならば迷う事はないのだが、慣れない駅で下車した時、位置と方向を少しでも勘違いすれば目的の出口には到達しない。
列車の利用は本当に神経の集中を必要とする。
それでも神経を集中して、傍らの人に尋ねながら誘導ブロックを利用すればなんとか目的地に着くことができる。
登山やスキーはそんなわけには行かない。サポーターの情報伝達や介助がなければ命さえ落としかねないのである。
スキーは登山の危険生にスピードという問題が付加される。不安を抱きながらも富山駅に到着した。
列車から降りて正面口に出ようとしたがどうも方向を間違えてしまったらしい。北口のところへ出てしまった。
[正面口はどちらですか?」と通りすがりの人に尋ねた。
「こっちです。」と若い女性の声。
「有難うございます。」と私は方向を変えて歩き出すと
「そっちではありません。こっちです。」と若い女性。
若い女性はジェスチャーで方向を示しているらしいが私には見えない。
そっちは何処で、こっちは何処だろうか?私にはこの答えが数学の微分や積分の問題よりも難しい。
そっちは何処で、こっちは何処だろうか?私はなんとか見える蛍光灯の光の方を向いて
「真っ直ぐ前ですね。」と尋ねた。
「はい、そうです。」と若い女性。
微積分より難しい問題を解いて無事袋谷さんと出会う。
車内で今年の登山の予定を話しているうちに「雷鳥バレー」に到着。
スキーと靴を2500円で借りて早速スキー靴を履いてみる。足首が完全に固定されてしまい歩くのがやっとだ。休憩所には「來拝山」に共に登山した加藤さんがすでに待機されていた。
先ずスキーの履き方と脱ぎ方を習う。これが案外難しい。バランスをとってきちんとスキーの板に足を乗せることがなかなかうまくいかない。
とりあえず片方の足だけにスキーを履いて歩く事にした。
片足スキーの歩行の後はいよいよ両足にスキーを履いての歩行である。
「逆ハの字」にしてエッジを効かせてすべりを止めて歩くのだがこれが上手くいかない。利き足の右足は上手くエッジですべりを防ぐ事が出切るのだが左足はすぐに流れて滑る。体制が崩れてシリ餅を何度ついたであろうか。
それでも時にはバランスを崩しながらもなんとか歩くことができるようになった。
午前中は2度の休みを入れながらスキーを履いての歩行の練習に時間を費やした。
心配していた雨がだんだん強くなってくる。とりあえず、休憩室に戻り昼食にした。
他の会員の皆さんと豚汁・もつ鍋の味をゆっくり楽しむ。運動した後の鍋は格別だ。
心を開いて話し合える仲間。そして美味い鍋料理。話しが弾む。雨は止みそうにもない。このままストーブの周りで談笑して時間を過ごすのもまた良い。
2時間ほど話しに花が咲いた。幸な事に雨が止んだ。早速スキーを履いて滑る事にした。
今度はボーゲンを習う。
加藤さんが先導役で袋谷さんが後見役になりその間に私がはさまれて滑る。
、まっすぐに足を揃えn嚮^に開くを繰り返す。ゆっくり、片方ずつ開く。
土踏まずには卵があるようにイメージして、n嚮^でゆっくり左右に踏むようにする。
加藤さんの指示にしたがいながら方向を確認して滑り出した。
ほんのわずかな勾配なのにスピードが出て止まらない。スピードに対する恐怖を感じる。暴走だ。すばやく加藤さんが私の体を支えて止めた。今度は止まる練習をする。
踵を外側に向けてエッジをきかして止まるのであるがこれが上手くいかない。
右足と左足の力が違いバランスが崩れてしまう。何度転んだ事か。
私のはボーゲンでなくてバーゲンだ。もちろん「尻餅のバーゲン」だ。
[転ぶたびにスキーは上手くなる。」という言葉に励まされ、練習した。
帰えるころには、バランスを崩しながらもなんとかスピードを調整しながら止まれるようになった。こうなるとスキーは楽しい。登山と同じくスキーの虜になってしまいそうだ。
次の機会を楽しみにしながら「雷鳥バレー」を去った。


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