高峰山957.7Mに登山「平成14年9月15日「日曜日」


「三つ星山の会」の人たちと上市の高峰山に登る。朝、7時20分に城端の山田さん・松村さんと高岡の清水町で待ち合わせる。夜半にかなりの雨が降っていたので、天候を心配していたが空はだんだん明るくなってきて、陽射しさえ出ている。時間通りに高岡を出発。
松村さんとは、8月に「立山」の登山を共にしたばかりである。山田さんも今年の夏「薬師岳」に登山されたこともあって、車の中で会話がはずむ。
富山まで行く途中五分ほど車を止めて「高峰山」の資料を山田さんに読んでもらう。
高峰山は「立山」から大日岳」・早乙女岳と下りてきた稜線の続きの山である。頂上では剣岳・大日岳の景色が素晴らしいそうだ。段差もあまりなく、初心者でも気軽に登れるようだ。
富山で「三ツ星の会」の人と合流する。視覚障害者とサポーター、総勢22人での登山である。車6台に分乗して一路上市をすぎ「西種」を通り「骨原」に向かう。」
骨原のプレハブの小屋の前で車を下りリュックを担ぐ。私はこの瞬間がたまらなく好きだ。山への期待と程よい緊張感によって全身に血液が満たされていくような感じがする。10時05分「高峰山」の頂上に向かって出発。
手入れされた大きな杉の木が生えている林道を登る。緩やかな勾配で通常の道と変らないくらいである。野菊と川なでしこが秋風に揺られて咲いている。
話を楽しみながら歩を進めていくうちに高峰山登山口に着いた。
ここから杉の木から低いぶなの木に変る。右手に「鍋冠山」が見える。この山は登山道がないために雪のある季節しかのぼれないそうだ。
稜線の道は平坦で本当に歩きやすい。しばらく行くと遭難碑が立っていた。昭和35年3月16日二人の高校生が凍死している。
その朝は、快晴のため放射冷却で雪道はしまり、歩いても沈まない状態だったらしい。歩きやすいので予定よりも山の奥まで進んだそうである。帰り道は雪が緩み歩行に時間がかかり、そのうちに天候が急変して吠雪になってしまった。二日後に発見された時は完全に凍死していたそうである。
吹雪で視界はきかず、降りつづける雪の中で疲労困憊して身動きが取れなくなって死に至ったのだ。青春真っ盛りの若い高校生の命を、かくも簡単に飲み込んでしまうとは、やはり山は厳しい。凍えのために手足が動かず、遠のいていく意識の中でこの二人はなにを思ったのか。そんなことを思うと胸があつくなって、碑に彫ってある文字を手で確認するように静かに触った後そっと掌を合わす。
道は平坦で平地を思わせるほどである。稜線なので両側も開けている。天候の良い日であれば周りの山々や富山平野が見えるということだ。あいにく曇り空で山々の景色は確認できないがそれでも富山平野が眼科に見えているらしい。
頂上手前、少し厳しい段差があるが長くは続かない。それを登りきると三角点のある頂上だ。11時10分「高峰山の頂上に到着。
ここで昼食をとる。かなり広くて展望が良い。ここからの雪の「剣岳」・「大日岳」の山陽は見事であるそうだ。「ななかまど」はまだ緑色で紅葉はしていない。この木は硬くて七回、竈に入れても燃えないところからこの名がついたということだ。紅葉の時期にこの山頂からの景色に触れたいものである。
12時10分同じ道を下山。この山なら少し速く歩く訓練には最適な山道である。山田さんに恃んで歩く速度を速めてもらった。歩調を速めたその瞬間、木の根に左足をとられ、昨日の雨で足が滑り、思わず転倒してしまった。幸にも大きな負傷ではなかったが、少し足首を捻挫したらしい。10日間で3000Mの山を二箇所登っても擦り傷程度の負傷でしかなかったのに。山は高いから危険ではなく僅かな心の高慢と緩みが原因で大事に至るのであろう。再度、気を引き締めて歩みの速度を速める。かなり調子が良い。途中で「岩うちわ」「釣船草」の草を手にとって山田さんに説明をしてもらう。本当に葉が「うちわ」であり、船がつられている草であった。生まれた赤子の手より小さな岩うちわの葉、小指の第一間接にも満たない小さな船。手でそっと触って草と話しかける。
下山時間35分。早く歩く必用はあまりないが、どんな状態に陥って速く歩かなければならないことが起こらないとも限らない。無理はしないが訓練だけは必要である。
骨原の車のところで後続の人を待ちながら周りのはなしを聞く。回りは「ススキ」の原である。まだ完全に穂が開いてはいない。「ねじれ草」等もあるらしい。山田さんとの登山は植物の話が聞けて実に楽しい。本当に博識である。
しばらく、話しこんでいる内に会員の皆さん、無事下山。
車に分譲して帰路につく。私たち3人は途中で、再会を約束して別れを告げ、湯神子「ゆのみこ」温泉に向かう。途中で「歩こう会」の人たちであろうか。団体で探索しながら歩いている人たちの姿を見た。歩くのも良い。単に山の頂上の往復だけでなく骨原集落の手前から大岩に出て日赤寺の国の文化財である「まがい仏」・修業者が打たれる滝を見たり、また春に、水芭蕉の群生している鳥越峠に出るのも興味がある。新雪の時期に「ワカンジキ」を履いての登山もしてみたい。いつまでたっても私の空想癖は治らないようである。そんなことを考えているうちに「湯神子温泉」に着いた。500円を払って入浴。登山の後の温泉は格別である。なんともいえない贅沢な気分にさせられる。
高岡着、17時。山田さんと松村さんに再会を念じ帰宅する。
多くの人のお陰で今日も素晴らしい一日を過ごさせてもらった。有り難いことである。ただ掌を合わす。


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