「立山」登山記 その2
バスの中で塘添さん夫婦と話す。先日富士山に登山した時、山小屋・、某旅行会
社のツアーから視覚障害者を理由に富士山登頂の拒否を受けた話を聞く。
手続きなどで多くの問題はあるとしても、障害を理由に山頂の登山を拒否す
ること、まして翌朝下山を強いるなんて許されるべきではない。
間接的にこのことを聞いたよりも当人から直接聞いただけに怒りが強く全身の血
が煮えたぎるような憤慨が全身を走った。
富士山からの下山後の袋谷さんの山小屋・旅行会社への申し出とその対応は聞
いている。安全を第一義として視覚障害者の登山は第三者から見ればかなりの
危険性を含んでいるように思われるだろうが、しかし、サポーターの豊かな経験
と視覚障害者の日常の訓練によって、視覚障害者の登山は決して一般の人が思う
よりは危険ではないと私は強く確信している。
海や山ーー自然ーー相手のスポーツは1歩間違えれば命を落とす。その危険性を
いつも背負っているからこそ、自らの全精力ををかけて取り組むことが出来る。
死と直面しながら行動するからこそ、自己の生を実感できるのだ。
そんなことを考えているうちにバスは立山を登り始めたらしい。美女平・弥陀ヶ
原・天狗平・・室堂に向かっている。
車窓から見えている称名滝・ソーメン滝・立山杉の巨木、などの説明を娘から聞
く。
60種類住む野鳥の宝庫の美女平・高山植物の咲いている弥陀ヶ原・地獄谷・日本一落差「350m」のある称名滝など今回はゆっくり味わえないが機会があればこの足で踏みしめたい。
春の陽射しの中で一日野鳥の声を楽しむのも贅沢な一日の過ごし方だ。
9時30分室堂「2450m」に到着。太陽の陽射しも出ている。思ったよりも
好天気だ。
娘は登山体験豊かな女性のサポートをすることになった。彼女にとっては視覚障
害者の登山のサポートは初体験である。日常生活で私と共に歩く事が多いので普
通の人よりもサポートは心得ているとは思うが、やはり気がかりだ。段差のサポ
ートはもちろんであるが、特になんでもないと思われる狭い溝や頭上の木の枝に
には注意を払うようにと娘に声をかけた。
私は野田さんにサポートをしてもらうことになった。