北アルプスに挑む

「薬師岳」2926mに初登山

「薬師岳」は、深田 久弥氏が日本100名山の50番目に書いているように北アルプスの山の中でも威風堂々した山である。姿は薬師如来に似ているからその名が付いたと言われている。その名前に魅かれて登る決意をした。

視覚障害一級ではたして頂上まで登れるか不安である。まして、この度は同僚の田原さんと二人きりの登山である。決意した以上は、とにかく無理をしないで行動するだけだ。

8月6日(火曜日)朝6時高岡を同僚の田原さんの車で出発。良い天候だ。

有峰林道の使用料金1800円を支払って、有峰の「折立」(1365m)に8時に到着。有峰湖が眼下に広がっているらしい。かなりの視界がきいている。湖から吹いてくる風が頬をすがすがしく気持ちよく吹き抜けていく。標高が高いせいであろうか。左前方から頬白のさえずりが聞こえてくる。近くの山では、もう鶯以外の鳥のさえずりは聞かれない。

8時30分登山の手続きを取り準備をして、ザックを担ぐ。心を引き締めて20メートル先の登山道へと向かう。

ここから三角点までは一本調子の道が長々と続く。30分も歩くと額から汗がひたたり落ちる。周りのぶな樹林の間をただひたすら登る。

このような山道は本当に大地を踏みしめて歩いている感じが体全身に伝わってくる。

かなり体力的にもきついコースだ。なんとか3度ほどの5分休憩をとって10時50分に1870.6メートルの三角点に到着。一杯の水が全身を潤す。こんなにも水がおいしいものであったのだろうか。休憩10分を取り今日の宿泊小屋の「太郎平小屋」と向かう。

しばらく歩を進めていくとあたりの様子が変わってきたのに気づく。のぼりの勾配もきつくはない。回りも明るい。樹林も、低イ「たけかんば」になったのであろう。

緩やかな山道を快い風を受けて歩く。周りは牧歌的な草原のようだ。こばいけそう ちんぐるま にっこうきつげ等の高山植物が登山者の心を和ませているように咲いている。その草花を心に浮かべ雰囲気を味わいながら歩を進める。途中休憩所がある。眼下に有り峰湖が光って見える。湖水から吹き上げてくる風のせいか、なんともいえないすがすがしい風だ。

かなり体調が良い。歩みの速度もグングン上がってきている。

今晩の宿泊の赤い小屋が見えてきた。「太郎平小屋」だ。

周りは四方開け、高山植物の宝庫だ。険しい山岳にほんのわずかに。周りが開けた土地だけにけなげに咲く高山植物は、やはり人の心をひきつけないではおかない魅力を持って咲いている。説明を聞きながら、姿、形色を想像させる。

太郎平小屋「13時30分」(2300m)に到着。

折立から太郎平小屋までの参考タイムは5時間である。本に書かれている時間と全く同じだ。

一泊三食「9200円」を支払って部屋に行きリュックを下ろす。

早速ビール「500円」とインスタントラーメンを注文する。山小屋に無事到着を祝い乾杯。ビール一口がのどを潤し腹にしみわたる。遠い遠い飲み屋で合った。それだけに美味い。

今日はここで宿泊するだけである。贅沢な一日の過ごし方だ。

夕食まで、のんびりと散歩。

私には見る術はないが「水晶岳」や「雲の平」がよく見えているらしい。

5時過ぎに夕食をとる。隣に四国から来たという夫婦と同席する。昨日は「大日岳」に登り、予定では下山するつもりであったが、天候が良いので「薬師岳」まで足を伸ばされたそうだ。私の白杖を見てかなり驚嘆されたようだ。

食堂はかなり混雑している。奥さんは、旦那さんの文だけでなく私たちのご飯・味噌汁・お茶の給仕を積極的にして下さった。味噌汁の美味さにしたをうつ。

食事をしながら登山の話をする。かなりの登山家である。どうも奥さんの方が山が好きらしい。温泉の宿泊を変更して「薬師岳」に登ることにされたのは奥さんの意見らしい。旦那さんの言葉の節節に少し愚痴めいたものもうかがえるが、「薬師岳」への変更も快諾されているようだ。良い夫婦である。

食事を済ませて外へ出る。

まだ、日の入りは見ることができる。雲を赤く染めながら日がだんだんと沈んでいく。美しい。この日の入りを見ただけで満足だ。しばしの間、何も考えずただひたすら日の入りを眺めていた。

明日は「薬師岳」の頂上に向かっての登山だ

薬師二日目に続く