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「全盲のクライマー、エヴェレストに立つ」を読んで  平成15年5月12日

著: エリック・ヴァイエンマイヤー
訳: 海津正彦
出版社: 文芸春秋

 作者は単なるエベレストの頂上に立って奢り高ぶる盲人ではなかったです。
彼の幼少時代からの出来事、「特に母の愛、父の愛、兄弟の愛」に支えられて生きていく様子。
自分が盲目であることを受け入れなければならない反抗と苦悩。
悪友とのおもしろい青春時代。

母との死別。

小学校の先生としての生徒の付き合い。そこでの恋愛。
盲導犬との一心同体の生活。
そして、山との出会い。そこで感じる人間愛、宗教心。

前向きに生きていく一人の人間の生き方をしみじみと考えさせられました。

私が心に残った本からの言葉

私が山に登るのは、他の人に向かって「盲人でもこんな事が出来る、あんな事も出来る、ということを証明してみせるためではない。
私が山に登る理由は芸術家が絵を画くのと同じ。大いなる喜びをもたらしてくれるからだ。とは言え、ここで私の密やかな楽しみを白状しなかったら私は嘘つきということになる。
実はそういう皮肉屋やわからず屋たちと正面からわたり合って彼らの疑念を吹き飛ばし、彼らの否定的なステレオタイプをぶち壊し、私たちに何が出来、何が出来ないか、ということに関する極めて狭小な彼らの判断基準を一旦受け入れた上でそれを千千に砕く時はまさに快感である。
そういう判断基準を作り変えた時、何万、いや何百万の人たちの前に置かれているバリアの数が減るのである。
そしてもし私のクライミングが私に続く人たちに光喜と希望の扉を開く役割を多少とも果たせるなら自分の行ってきたことが大きな誇りともなるのだ。

マウントエベレストの登頂は大きな名誉だが、私の人生にとってそれより遥かに大きな名誉は大勢の確固たる信念を持つ友人たちがベテランたちの破局の予言には耳もかさずに彼らの人生を私の人 生に全面的に連結してくれた事である。